高次脳機能障害
高次脳機能障害について
交通事故で頭部を損傷すると治癒したように見えても脳に障害が残ることがあります。「高次脳機能障害」とは、脳損傷に起因する認知障害全般を指し、この中には失語・失行・失認のほか記憶障害、注意障害、遂行機能障害、社会的行動障害などが含まれます。
具体的には、以下のような症状が現れます。
記憶障害
- 物の置き場所を忘れる。
- 新しいできごとを覚えられない。
- 同じことを繰り返し質問する。
注意障害
- ぼんやりしていて、ミスが多い。
- ふたつのことを同時に行うと混乱する。
- 作業を長く続けられない。
遂行機能障害
- 自分で計画を立ててものごとを実行することができない。
- 人に指示してもらわないと何もできない。
- 約束の時間に間に合わない。
社会的行動障害
- 興奮する、暴力を振るう。
- 思い通りにならないと、大声を出す。
- 自己中心的になる。
高次脳機能障害の診断基準は、以下のように定められています。
診断基準
Ⅰ.主要症状等
1. 脳の器質的病変の原因となる事故による受傷や疾病の発症の事実が確認されている。
2. 現在、日常生活または社会生活に制約があり、その主たる原因が記憶障害、注意障害、遂行機能障害、社会的行動障害などの認知障害である。
Ⅱ.検査所見
MRI、CT、脳波などにより認知障害の原因と考えられる脳の器質的病変の存在が確認されているか、あるいは診断書により脳の器質的病変が存在したと確認できる。
Ⅲ.除外項目
1. 脳の器質的病変に基づく認知障害のうち、身体障害として認定可能である症状を有するが上記主要症状(I-2)を欠く者は除外する。
2. 診断にあたり、受傷または発症以前から有する症状と検査所見は除外する。
3. 先天性疾患、周産期における脳損傷、発達障害、進行性疾患を原因とする者は除外する。
Ⅳ.診断
1. I〜IIIをすべて満たした場合に高次脳機能障害と診断する。
2. 高次脳機能障害の診断は脳の器質的病変の原因となった外傷や疾病の急性期症状を脱した後において行う。
3. 神経心理学的検査の所見を参考にすることができる。
高次脳機能障害は、生活に重大な支障をきたすものであるにもかかわらず、認定基準が明確でないため、後遺障害等級の認定を受けるのは容易ではありません。高次脳機能障害を認定してもらうためには、最新鋭の高性能MRIの使用、ウエクスラー式知能検査、医師の意見書等を組み合わせて緻密な立証をする必要があります。高次脳機能障害が認定されず、不満をお持ちの方、ぜひ一度ご相談ください。