三つの基準による賠償額の試算
Aさんの事例
- Aさん(男性・40歳、年収500万円、家族は妻と未成年の子2人)
- 歩行中に自動車事故で死亡
- Aさん側に過失なし
- 事故日から保険金支払日まで2年
交通事故の賠償金額が損害賠償額の三つの基準で大きく異なることは、既に述べてきたとおりです。
上記の交通事故があったと仮定した場合、三つの基準によってどの程度の金額の差が生じるか試算してみます。
項目 | ①自賠責保険基準 | ②任意保険基準 | ③裁判基準 |
---|---|---|---|
死亡慰謝料 | 1,300万円 | 1,800万円 | 2,800万円 |
逸失利益 | 5,125万円 | 5,125万円 | 5,125万円 |
葬儀費用 | 60万円 | 100万円 | 150万円 |
遅延損害金 | なし | なし | 888万円 |
弁護士費用 | なし | なし | 887万円 |
合計額 | 6,485万円 | 7,025万円 | 9,770万円 |
保険金上限額 | 3,000万円 | なし | なし |
保険金額 | 3,000万円 | 7,025万円 | 9,770万円 |
③裁判基準では、①自賠責保険基準・②任意保険基準に比べて慰謝料金額が著しく増大します。
遅延損害金の加算も相当の金額になることが分かります。
同様に下記の重度後遺障害事故があったとした場合、三つの基準でどのぐらいの差異が出るか試算してみます。
Bさんの事例
- Bさん(女性・50歳、主婦、家族は夫)
- 歩行中に自動車事故で重症
- Bさん側に過失なし
- 3カ月の入院と9カ月の通院後症状固定
- 治療費・交通費は実費を病院及びタクシー会社へ直接支払済
- 後遺障害として両下肢の機能を完全喪失で歩行不能
- 事故日から保険金支払日まで3年
項目 | ①自賠責保険基準 | ②任意保険基準 | ③裁判基準 |
---|---|---|---|
後遺障害慰謝料 | 1,100万円 | 1,800万円 | 2,800万円 |
治療費 | 実費 | 実費 | 実費 |
交通費 | 実費 | 実費 | 実費 |
休業補償 | 208万円 | 208万円 | 348万円 |
入院雑費 | 10万円 | 10万円 | 15万円 |
入通院慰謝料 | 153万円 | 180万円 | 226万円 |
逸失利益 | 2,254万円 | 2,254万円 | 3,781万円 |
遅延損害金 | なし | なし | 1183万円 |
弁護士費用 | なし | なし | 717万円 |
合計額 | 3,725万円 | 4,452万円 | 9,070万円 |
保険金上限額 | 3,000万円 | なし | なし |
保険金額 | 3,000万円 | 4,452万円 | 9,070万円 |
①自賠責保険基準・②任意保険基準では、専業主婦の休業損害・逸失利益は日額5,700円で計算される場合が大半です。
③裁判基準では、専業主婦の休業損害・逸失利益は女子労働者の平均賃金(2011年現在348万円)で計算されます。
③裁判基準による計算では、休業保障、逸失利益が大きく増額しています。傷害・後遺障害慰謝料についても裁判基準では、大幅に増加しています。遅延損害金の加算も、相当の金額となることが分かります。
※上記金額は、仮定条件における試算例で、付随事情によって金額は変化します。